死噛 シビトマギレ 感想

 

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あまり見る人もいないと思いますが、一応注意はしときます。

 

 

 

 

 

シビトマギレ、超楽しかったー!

まず始めに、これだけははっきり言っときたいです。なぜかというと、超楽しかったんだけど……ちょっとうーんってところもあるよねというのが最初にクリアした時の正直な感想で、ネガティブなことを書くかもしれないから、前提としてこの気持ちが一番強いと言及しておきたかったからです。

しかしですね、隠しエンディングを見てそんな気遣い要らねぇかなという気持ちになりました。こちらのうーんポイントを把握したうえで、それを補完する内容になっていると思ったからですね。なので、大手を振ってもう一度言えます。

 

シビトマギレ、サイコー!

 

 

前作(正確には前々作)死印は数年前にプレイ済みです。何周もしたわけではないのでちょっとあやふやな部分もありますけど、ゲームシステム上の違いは置いといて、死印と比較して一番変わったなと思うのは難易度の易化だと思いました。即ゲームオーバーに繋がるデッドリーチョイスはほとんどなかったし、実際プレイしていてゲームオーバーになったのは最初のシビトからの手紙を無視して直帰したのと狛犬の赤い彼岸花に漂白剤かければいいんだ!と直行して霊魂足りなくなった2回だけでした。

同行者の生存ルートを踏むのも簡単でしたね。同行者の選択によって詰むことがなかったし、最初の華子の探索で牛乳付きモップが出てきたときはこれを使うと死亡ルートに進んじゃうんだろうなと思ったけどそんなことはなく、わかりやすいヒントまで出してくれたので、1周目では誰も死なせずにクリアすることができました。

この変更は好みが分かれるところではあると思いますが、個人的にはもうちょっと難しくてもよかったかなとは思いつつ悪い改編ではないと思いますし、いくつかの点から擁護もしたいですね。

偏差値2の自分でも気づいたことですが、今作の怪異はこれまでと違って因果応報を徹底していますよね。一部を除いて、今作の怪異の犠牲者は皆怪異に殺されるだけの理由がありました。これは死印やNGなどで見られた怪異の理不尽さをそぎ落として一般的な幽霊っぽくなったなぁと思うところですが、この改変によって八敷や印人たちがずけずけと怪異に踏み込んでいっても安易に死んだりしない理由の一つになっていると思いました(まあ大門は死にかけてたけど……)。舞台が同一の学校ということもあり、ボロボロと人が死んでいくと話に無理が出るのも予想できますし、復讐対象以外そこまで殺意の高くない怪異とゲームの難易度がマッチしているなーと思いました。

あと、これはアクロバティック擁護の自覚があるのですが、ゲームを難しくしすぎて、攻略サイトを見ながらプレイされる可能性を減らしたかったのカモ!? みたいなこともちょっと思いましたね。このゲームの白眉は何といっても最後の推理にあると思うので、あそこまでの道筋をあえて簡単にすることで唐突に突きつけられる超重大な選択を自分で考えてほしかったのカナ!? とか思いました。まあこれはアクロバティックですが……。

 

本編の感想に入りますけど、話として一番面白かったし力が入っているのを感じたのは最初の花子の怪異ですね。シビト以外の二つの怪異と違って怪異の発生がとても近く設定されているのもそうですし、怪異に被害者が一番臨場感を持って関わっているのが伝わってきました。カシマとコックリおじさんが伝聞などでちょっとぼやけて入ってくる情報があったのに対して、堀越から話を聞けたり手記で華子と堀越の行き違いを確認できたりと、「生の情報感」がとても楽しかったです。だからこそちょっとね~……、堀越どうにかして助けてやれんかったんかという気持ちがどうしてもね……。や、死にスチルが抜群に良かった(多分このゲームの被害者の中では一番)からいいってことにしますか! そうしましょう。

カシマとコックリおじさんも面白かったのは間違いないんですが、ぶっちゃけもうちょっと情報欲しかったな~っていうのは感じました。特にそれを感じたのはコックリおじさんで、「情報足りないっす」ってシビトから言われて八敷も「足りないけどしょうがない」って言いながら対峙する割にはサスペンシブアクトもあっさりしていましたね。事態を正確に把握できていないまま、なんとなくこれしかねぇだろって選択肢に誘導されてクリアしたような感覚でした(これは僕がバカなだけかもしれんが)。

あと、これは最後以外共通ですけど、生存ルートに進むための「より良い供養」がちょっとわかりやすすぎるような気がしました。ゲーム的な話ではなく、分かりやすく美談というか、これも怪異がより人間らしく復讐に終始していたからこそなのかもしれませんが。死印の生存ルートを踏むためのこれでいいのかな~とドキドキしながら選択する感じが薄くなったかなとは思いました。

 

……まあそんなのはどうでもいいですね! 最終章、「虫黴様は誰なのか」の推理が滅茶苦茶楽しかったので!

僕は選択画面で持ち物の情報とPCのメモを往復しながら20~30分考えて正解を選べましたが、そのくらいの悩ましい塩梅で情報を出してもらえたのが本当に楽しかったです。先入観にとらわれず、虫黴が二人の怪異であることに注目したらもっと確信をもって選ぶことができたのでしょうが、僕は当初みちほがミスリードである可能性にビクビクしていましたし、堂領と断定するには情報が少ないことにビビっていました。ちょっとその時のメモコピペします。

 

 

最終推理


堂領姫子

・安岡は堂領と話していて気が遠くなっている

・堂領はみちほが死んだのを見た後に「みちほは先生のことが好きだった」と発言している

・堂領は最初の華子の時も生存しているし、シビトの予告で生き延びている

・みちほの遺体を確認している 消えていてもよかったかもしれない

・坂本は堂領が八敷を好きなのではないかと疑っていた


絹川みちほ

・角田のもとにMKなる人物からメールが届いている。黒川充をファーストネームから呼ぶとMKで、絹川みちほもMKである ついでに虫黴もMK この時は二人とも生存

・8月まではカエルが好きな少女だったのに、時計塔で人形を見てからは虫が好きになっている →虫と黴に食べられたシビトと符合しない? いや、人形少女が二人の残留思念なら二人が助けてくれたとも取れる

・みちほは生前「堂領が先生に気があるのではないか」と発言している

・生活感のない部屋

・柏木愛のことを知っていた

・人形少女のことを疑っていた

・4章でのセイトカイの予告から生き延びていた

・鹿島に取りつかれたのに生きていた

・コロシテと言っていた

・怪異の情報を出してくれたのはこの子

・二人に対しては秘密(見えたビジョンまで)を話している


ゴスロリ赤少女

・みちほから正体はシビトなのではないかと疑われていた

・「私たちはあの日 虫黴に食われた」と発言している 2人いる?
 →私たち、が、みちほと堂領二人を指している可能性がある

・怪異に対するヒントをくれていたのはおそらくこの子

・「かわずは虫けらをはらう」とアドバイスをくれた →虫に詳しい みちほの可能性がある

・シビトが姿を変えたときにこっちも修復している

 


シビト(虫黴)

・何かを食べたことで力を増したと言われている

候補 堂領 坂本(第二候補) 真下 人形少女(本命)

 

 

 

いやー、今見返すと超重要な二人の痣と白髪について言及しとらんですね。

思考の流れとして、一番最初に疑ったのは堂領単体でした。なぜかというと、「みちほが八敷のことを好きだった」という情報が出てきたのがみちほが死んだ後で、しかも堂領の口から出てきた情報だったからです。

それまでは坂本が主に堂領が八敷に好意があるのではないかと疑っていたり、みちほからもそういった示唆があり、堂領が赤面するシーンもありました。それなのに、みちほが死んでからの堂領は八敷への好意というより、みちほから八敷への好意を伝えるシーンが多かったのを記憶しています。それどころじゃねえだろというのはもっともですが、堂領が虫黴だった場合、恋敵になったみちほを殺させて八敷を独り占めしようとしたと考えるのが一番腑に落ちました。みちほ単体がシビトだとあまりに露骨すぎるというのもありました。普通の話だったら絶対ミスリードですからね。

最終的に、人形少女の「私たちは虫黴に食べられた」という発言が決め手になりました。上のメモにもありますが、怪異を鎮めるためにヒントをくれていたのが人形少女だったと仮定すると、カエルのヒントをくれたのも決め手としてデカかったですね。

……という感じで、僕は最終推理を大いに楽しみました。終わり方も僕好みというか、「祈り」ってワードがね、ガン刺さりしましたね。そうだよね、八敷には「祈り」があるからみんな協力してくれるんだよね……。

 

あと、感想として外せないのは前作死印ファンに対しての手厚い、いや、手厚すぎるくらいのファンサービスですね。バンシーとつかさが全くのノータッチだったのはまあご愛嬌ですが、お前ら、印付けられたわけでもないのに死の危険がある調査を手伝ってくれすぎだろと。なんならレインコートで何人か死にかけているのにもかかわらず。

死印を通して育んだ友情と八敷に対する信頼がビンビンで良かったですね。なんたって八敷は死印初見ノーデス全員生存クリアを果たした腕っこき怪異ハンターなんですよ。そんでもって「祈り」があってともすれば怪異に連れていかれそうな危なっかしさもあると。そりゃお前、手伝うしかねえだろ! と気持ちよく命を預けてくれる印人との関係をお腹一杯堪能した後に、最後のパートナーとして選択の余地なく王道を往く真下と。もう満漢全席ですね。もし次作があっても絶対こいつらいてくれるっていう信頼感があって、死印好きとしてはここら辺は5億点でてました。

主に死印のファンからクラウドファンディングしてもらったっていうのも多少は影響があったりするんでしょうか。そこら辺はわかりませんが、「わかってんな~」って感じで嬉しくなっちゃいましたね。

 

 

 

ということで、貧弱な語彙で褒められるだけ褒めたつもりですので、ここからは個人的に残念だったところにも言及したいと思います。冒頭でも述べましたが、不満点の一番大きな点は隠しエンディングを見たことで解消されました。具体的にどこが不満でどう解消できたのか、あとはそれを踏まえた総評をしたいと思います。

 

不満点の一つ目は、不気味な歯集めがノイズになって話に入り込みにくかったことです。ゲームを有利に進めるため、なによりキャラクター情報を埋めるために是非とも全部集めたい気持ちになったのですが、怪異との対峙が近づくにつれ、残り1.2個の歯が気になってしょうがなかったですね。章が進むと取り直し出来ないので、取り逃しがないかと一度来たステージをA連打しながらグルグルするのを章ごとに繰り返していました。横スクロールで動けるようになって探索要素があったのは喜ばしいことですが、章をまたいでも後で取り直しができるような仕組みであったり、話のテンポを止めないような工夫が欲しかったなと思いました。

 

二つ目はBGMですね。どのBGMも雰囲気に合ったものだったとは思うのですが、印象に残るものがぶっちゃけ全然ありませんでした。最終盤で死印のメインテーマが流れたときにはそりゃぶち上りましたが、逆を言うとBGMでテンションが上がるような体験はそこだけだったかな……というのが正直なところです。

 

で、ここからが隠しエンディングを見て解消された不満点です。

 

一つは、死印キャラを丁重に扱ったのに対して、今作から出てきたキャラクターをぞんざいに扱っているように感じた部分があることです。堂領とみちほは魅力的なキャラクターではありましたが結果的にはシビトでしたし、なにより近衛と坂本に話のしわ寄せを全て負わせてしまっているように感じました。確かに、坂本にとって八敷は怪異という信じがたい物を追っているという名目で学校の闇をひたすら嗅ぎまわっている怪しい中年ですし、近衛からしたら「人は死んじゃったけど怪異は解決したから対応よろしくー」というどうにもならん怪異ハンターです。それぞれの立場から八敷に厳しい言葉を投げかけるのは至極当然です。しかし、ゲームは八敷視点で進みます。印人メンバーはわかってくれる一方で理解のない対応をしてくる二人に対して、あまり好印象を持つことができなかったのは間違いありません。

 

二つ目もこれに関連する不満なのですが、「結局、八敷誰一人として救えてなくね?」ということです。今回はある意味一貫して怪異の復讐譚なので、救えなかったことに対する引け目は感じにくいように作られているとは思います。大勢の人を虫黴の呪いから救ったのも事実でしょう。ですが、結果としてシビトから予告された被害者をだれ一人救えませんでした。虫黴が好き放題やって最後に救われて終わるという話ともとらえられます。これはちょっとどうなのかなーと正直思いました。だからこそ、せめて行き違いで予告の対象にされた堀越は助けるようにできなかったのかなと。他の被害者と違って頑張れば和解を導くこともできたように見えただけに、怪異は救えるけど人は救えませんでしたは怪医家としての活動に早速陰落としてねえかと思うところでした。

 

というのが、通常のエンディングを見た時の不満でした。そのため、はいドンピシャ織り込み済みですとばかりに回収される隠しエンディングは滅茶苦茶いいなと思いましたし、上手いなと思いました。

 

偏見を振りかざしてきていた坂本にも良心を感じることができましたし、土壇場で八敷を追い詰める役割を担わされた近衛も、生徒を想う純粋な気持ちと、八敷に対する感謝を示したことで再び魅力のあるキャラクターとして再着地に成功したと思います。えっそういう感じなんだ……と若干嫌い寄りになりかけた僕の気持ちを引き戻してくれました。なにより、堂領とみちほが生存したことで「八敷は腕っこき怪医家として仕事に成功した」ことになりますし、理不尽により殺された二人を生き返らせることで今作の怪異(の被害者)の一貫性が取れたのもグッドポイントです。

……とそれっぽく話しましたけど、魅力的な堂領とみちほが生きているってことが単純に嬉しかったっすね。二人の記憶が戻るところとか、たまんなかったっす。

 

 

ということで、隠しエンディングを見たうえで話の不満点が解消されて冒頭の感想です。

ただ、一つ危惧することがあって、もし続編やDLCが出たとして、通常エンディングと隠しエンディングのどちらを正史として扱うのか、というのは非常に気になるところですし、それ如何では評価が上下しそうです。

いや、わかりますよ? 死を重く扱う死印シリーズにとって、一度死んだはずのキャラクターが生き返ってしまうというのは甘い着地であることは間違いないですし、だからこそシークレットのエンディングなんだと思うんですよ。通常の祈りで終わる話も好きですしね。だけど、今作を通じて八敷は誰も救えなかったというのはあまりにも辛すぎますし、二人がこれから印人メンバーに加わって一緒に調査してくれたりしたらシンプルに嬉しいっす。いいじゃないですか、怪異の残り香を持つ少女たちが仲間に加わるって、なんか面白い話作れそうじゃないっすか。ベジータが仲間になったくらいの気楽さでね、どうか、隠しが正史で頼むよ頼むからさ……。

 

 

長々とオタク特有の早口でまくしたてましたが、シビトマギレ、すごく楽しみました!DLCが出たらもちのろんで購入しますし、次作を作ることになって再びクラウドファンディングが行われたりしたら今度こそ参加して貢献したいですね。……常時金欠ですが2万くらいまでなら!

 

 

最期になりますが、

 

 

 

頼むから隠しを正史としてくんねえかな……。お願いだから……。