感想

星の巡礼者」をpixiv版で一回、こちらはざっと読んで、改めてvipでじっくり1回読んできました。

感想を伝えるにあたって、まず言い訳をしておきたいことがあります。それは、この話に込められているものの中で僕が読み取れたのはほんの一部であって、それも自分の経験に照らし合わせた解釈が大半を占めるということです。自分なりに物語を解釈すること自体は普通のことだと思うけれど、「元SS書きであり、元モバマスデレステユーザー」という点から、当時の創作とかモバマスの思い出を勝手に引き合いに出して解釈した部分が多く、作品の感想というよりは自分語りをしてしまうシーンがあると思います。僕の思い出に基づくモバとかSSへの決めつけが、くしゃぽいさんに不快な思いをさせたり首をひねらせることもあると思いますがご容赦いただきたいです。

また、自分の不勉強で作中に出てくるものの中ではっきりわからないこともありました。
参考にしたとツイートされた作品を読んでいないため、どの部分を参考にしているのか、あるいはパロディとして入れたシーンに対して「これはなんなんだろう……?」と野暮な疑問を抱いたシーンがあるはずだということと、特に前半の設問に素で答えられないところがあったということです。

感想に入ります。

前述したように前半はわからない点が非常に多く、最初に読んだときは失礼ながら「これってモバマスでやらなくてもよかったんじゃないの?」とさえ思いました。
その見方が変わったのは、中盤Pと藍子が猫を追って夢の中の世界に入り、そこで藍子に酷い言葉を投げてしまって藍子が別の夢に移動してしまったシーン。また、その後に来る設問の掲示板(vipと解釈しました)に投稿された小説に囚われてしまった人のエッセイを読んでからです。浅学な僕にとってこの二つがこの話を自分なりに解釈する唯一の手掛かりであり、ほかにも無数にある示唆を無視してもこれに当てはめて考えるしかありませんでした。

つまり、
Pとは現在の自分自身のこと
したがって藍子は現在の自分が見るモバマスそのもの
アイコはかつてハマりにハマったモバマスの姿
黒猫は情熱
亡くなってしまったおじいさんはかつての自分
博物館は過去の記憶(これは言及があったはず)

こういった風に置き換えて読むことができる、というか自分はこうとしか読めないと思いました。
この解釈は一般的ではないと思います。なぜなら、僕の経験を勝手に当てはめたところが非常に大きいからです。

つまり、「SSが好きで自分で書いたりもしてみたけれど、どうやら自分には才能がなく、またそれを認めたうえで努力を続けるだけの根性もなく、なんとなく疎遠になって今に至る」ことと「モバマス(あるいはデレマス)はかつて大好きだったものだったが、飽きが来たり他のコンテンツに目移りする中で次第に距離ができてしまった」という自分の経験を投影させてしまったなと思っています。

そういったフィルターを通すと、この話は「かつて好きだったものに改めてもう一度正面から向き合う」話に見えると思いました。

話の中で、黒猫(情熱)は中々つかまりません。祖父の遺作(自分の書いたモバマスSS)の中でアイコと一緒にいたはずの黒猫はいつの間にか消えて、昔の写真(つまりモバマスを好きだったころ)に一瞬だけ顔を見せます。次に会えたのは博物館(自分の記憶)で、より深い夢の中へ入っていき、そこでやっとPは黒猫の声を聞くことができる。この一連の流れからラストに亡くなった祖父に言及するシーンは「元モバマスSS書き」として読むと凄く感慨深いシーンでした。

自己を客観視するなんて野暮なことはせず頭を悩ませて一心不乱にSSに向き合っていた自分はもう戻ってくることはないし、かつてと同じようにモバマスにどっぷりとつかることもできないけれど、そんな思い出を忘れたい過去のようにぞんざいに扱うことはできない。もう一度それらとちゃんと向き合いたい。……という気概を感じました。このSSを読んで一番惹かれたところはこの部分で、前半で思っていた「これはモバマスじゃなくても」という気持ちはここで吹き飛びました。これはくしゃぽいさんがモバマスで書いたからこそ意味がある話です。

まあこれはちょっと過大解釈っていうか、SSを書きながら大きな悩みを抱えていた(と僕は思っています)くしゃぽいさんと昔から交流があったからこそ出た不純な見方かもしれないけど……。

vipはもう下火という言葉は生温いくらいに過疎になっているし、モバマスはサービス終了が決まり、デレステもかつての勢いを維持できているかと言われればそんなことはないでしょう。pixivは流行の物を書くかどうかで閲覧数からいいねの数から何から何まで露骨に差が出てしまう媒体で、その中でモバマスのシリアスな長編SSというのはどれほど読んでもらえるか計算できない部分があると思います。

……でもやるんだよ! モバマスが好きだから、SSが好きだから、かつて憧れたSSみたいに全力で向き合って書くんだ! 

という気持ちを、半ばこじつけながらも僕は感じました。この点が本当に素晴らしかったです。

(閲覧数とかモバマスの流行の話は私の主観であり、また失礼なことを言っている自覚があるのでこの点で不快に思われましたら全力で謝罪いたします。本当に申し訳ございません)

最後に、これは余計な話ですが、僕は猫ちゃんばっかり見てたので仮タイトル「猫を巡る冒険」もいいなーなんて思いました。

お世辞抜きにこの話を読めて良かったなと思っています。本当にお疲れさまでした。